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(その1)クヌギとツタ

 夢野八幡神社のご神木はガレージ上方の斜面に生えている巨大なクヌギである。一時は兵庫県の銘木100選に選ばれて、県から補助金をいただいていたが、関西電力が電線と接触するとのことで枝を切ったために、補助金の対象から外されたと父から聞いたことがある。

 落葉樹であるはずのクヌギが、冬でも緑の葉を茂らせているように見える(写真参照)のはツタが絡みついているからに違いない。こう思って、ご神木の根本から一段高くなっている焚き上げ場から近づいてご神木を眺めて見ると、確かにツタがクヌギの大木に絡んで葉を茂らせている。ところが、地面から出ているはずのツタの幹が見当たらないのである。

 令和2年の厄除大祭において、この謎を解く人物が現れた。年のころは70台半ばの小柄な男性、大祭初日の18日に参拝にこられ、「時々参拝に来ているが、気になっていることがある。ご神木が海側に傾きつつある。これはツタが絡んでいるからで、直ぐにもツタを切って、ご神木を守ってやらないといけない。」と話しかけて来られた。

 私もご神木にからむツタのことが気になっていたので、「ツタを切ってご神木を守ってやりたいと思いますが、地面から出ているはずのツタの幹が見あたらないのです。」と答えると、「それならこの位置から見てちょうどご神木の幹の反対側に生えている」とのこと。

 落ち葉に埋まった斜面に降りて行って確認してみると、確かに大木の幹に寄り添うように別の木が一本生えている。しかしながらその木の幹の直径は20cm近くあり、とてもツタとは思えない。そこに先ほどのご老人もやってきて「これだこれだ、かっては細かったが年々太くなりこんなに大きくなった。これがご神木を苦しめているので切らないといけない。」とのこと。のこぎりを取ってきて弟と二人がかりで長時間かかって何とか幹を切断した。切断したと言っても、ツタはご神木に絡みついたままである。幹は切断したものの、ツタ自らの重みで切断面の上下は接触した状態になっていた。

 翌19日の大祭二日目、昨日のご老人がまたやってきた。二日連続して参拝に訪れる人は珍しい。こちらから「ツタは切断しましたよ。」と声をかけると、「心配になって見にきたが、あれでは駄目だ、すぐに復活する。20cmほど離れたところをもう一か所切断し、その間の幹を取り払わないといけない。わしが切ってやろう。」とのこと。のこぎりを渡すとすごい勢いで切り始めたが、なかなか切断しきれない。途中で何度か交代して、何とか巨大ツタの幹の高さ20cmほどを切り取ることができた。切り取ったツタの直径を測ってみると、なんと17.5cmもあった。

 ご神木の喜ぶ声が聞こえるようだ。きっとあのご老人はご神木の気持ちを伝えにきたメッセンジャーだったのだろう。

ご神木物語

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←太いツタの幹を高さ20cmほど切り取った

↓切り取ったツタの直径は17.5cm

冬でも青々としているクヌギのご神木

(その2)昇って消える白蛇

 平成2年の厄除大祭に二日とも参拝に来られたご老人は、半世紀以上前の少年時代には神社の境内が遊び場だったとのこと。ご老人曰く「ご神木にはゲンジ(クワガタムシ)が沢山いた、付近にはサワガニも沢山いた。そして1mを超える白蛇がいていつも不思議なことが起きていたんだ。」

 ご神木の近くに杉とクヌギの木が並んで天に向けて真っすぐに伸びている。ご神木付近にいる白蛇はまず杉の木の幹を昇っていく。ある所まで登ると幹から枝に移る。杉とクヌギの枝はお互いに接近して重なり合うほどなので、白蛇は杉の枝からクヌギの枝に移る。クヌギの枝からクヌギの幹に移った白蛇は、今度はクヌギの幹を真っすぐに天に向かって昇って行く。そして突如消えてしまう。ご神木の付近では白蛇をよく見かけたが、必ず杉から登ってクヌギに移り、そのクヌギを昇る途中で消えてしまう。「どんなに目を凝らして見ていても突如として消えてしまう。杉から昇ってクヌギで消える白蛇が子供心に不思議でならなかった。」

白蛇が昇るクヌギ(左)と杉(右)

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(その3)連理木

参道階段を登り切った右手に樫(かし)の木が生えている。そのうちの2本、幹が途中で交わりX形になった連理木(*)がある。夫婦や恋人が一緒にこの木に触れるといつまでも二人の良好な関係が継続すると言われている。

(*)連理木;2本の樹木の枝や幹、あるいは1本の樹木の一旦分かれた枝や幹が癒着結合して一体となった木。理(木目)が通じた様が吉兆とされ、「縁結び」「夫婦和合」などの象徴として信仰の対象ともなっている。

(参考)白居易の『長恨歌』:在天願作比翼鳥、在地願為連理枝(天に在りては願わくは比翼の鳥となり、地に在りては願わくは連理の枝とならん)

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